霧の英彦山で、はじめましてを歩く
大阪から福岡へ三週間の出張に来ています。
せっかくなら、この土地の山を歩いてみたいと思いました。
向かったのは英彦山。
その日は小雨で、山はずっと霧の中でした。遠くは何も見えません。白い世界に、静かに入っていくような朝でした。
今回は、YAMAPでやり取りしていた方と一緒です。
文字だけで知っている人と、本当に会って、同じ山を歩く。
少しだけ緊張していたはずなのに、不思議とすぐに会話が始まりました。山の話をして、これまでの失敗談を笑って、気づけば人生のことや、本の話まで広がっていました。
霧で景色は閉じているのに、言葉だけは遠くまで届いていく感じがしました。
実はその方、膝を痛めていて、本来は休むべき状態だったそうです。
それでも「無理しないペースで行きましょう」と言ってくれました。
私は普段、つい速く歩いてしまいます。山でも、日常でも、どこか前のめりです。
でもこの日は、誰かが少し歩幅をゆるめてくれていました。
そのことに、途中でふと気づきました。
合わせてもらっている、という感覚は、思っていたよりあたたかいものでした。
岩場と泥んこの急登が続きます。何度も滑りそうになりながら、それでもなぜか楽しくて、ずっと「探検しているみたい」と思っていました。
途中で凍った滝を見ました。音のない世界で、水だけが時間を止めているようでした。
そして下山前、ほんの一瞬だけ霧が晴れました。さっきまで何も見えなかったのに、360度の山景色が急に広がります。
ああ、と思いました。ずっと見えなくても、最後に少しだけ見えることもあるのだと。
下山後の温泉で、冷えた体がゆっくりほどけていきました。 はじめましてだったのに、たくさん笑っていました。
山は距離を縮める場所なのかもしれません。
英彦山は、景色よりも歩き方を教えてくれた山でした。
速く登ることよりも、誰かと同じペースで進むことのほうが、あたたかいと感じた一日でした。
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