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三度目でやっと会えた高見山

2026年02月07日 16 views
三度目でやっと会えた高見山

三度目で、やっと会えました。高見山に。

行こうと思っていたのに帰国が重なって流れた一回目。友だちと向かったのに、登山口の途中で落石による通行止めにあって、別の山に変更した二回目。そして三回目は、まさに予定していたその日に出張が入りました。さすがに「もう縁がないのかもしれない」と思いました。三度あることは四度ある、ではなくて、なぜか私の中では「三回だめならもうだめ」という変な思い込みがあって、勝手にしょんぼりしていました。

そんなとき、友だちがぽろっと「出張の前に一人で行ってくれば?」と言いました。その一言で、止まっていたものが少しだけ動きました。調べてみると、奇跡みたいにバスの空席がまだ残っていました。迷う前に予約して、翌日には向かっていました。

その日は思ったより暖かくて、正直なところ雪と霧氷は期待していませんでした。今回はただ「やっと行ける」というだけで十分だと思っていました。でも、頂上近くまで来ると、ちゃんと雪が残っていました。真っ白というほどではないけれど、踏みしめるときゅっと音がするくらいには、ちゃんと冬でした。

一人で山に来たのは、本当に久しぶりでした。三年か四年ぶりだと思います。誰かと話しながら歩く山も好きですが、自分の呼吸の音だけを聞きながら歩く時間も、やっぱり好きだなと思いました。少し懐かしくて、少しだけ強くなった自分を確かめるような時間でした。気づけば、何度も立ち止まって写真を撮っていました。撮らなくてもいい景色まで、つい残したくなりました。

下山を始めたころ、空が急に明るくなりました。太陽が出てきて、さっきまで白く曇っていた向こうの山並みが、もしかしたら見えるかもしれないと思いました。一瞬、引き返そうかと考えました。もう一度頂上に戻れば、違う景色が見られるかもしれないと。でも結局、戻りませんでした。そのときの私は「また今度でいい」と思えたからです。前なら、きっと悔しくて走って戻っていた気がします。

山を下りて、高見山のあとにずっと楽しみにしていたたかすみ温泉へ向かいました。ところが、受付の前で気づきました。財布がないのです。家のテーブルに置いたままでした。あまりの間抜けさに、しばらく固まりました。

しかも私はタトゥーがあります。日本では入れない温泉も多い中で、ここは数少ない「タトゥーフレンドリー」の温泉でした。やっと見つけた場所で、やっと来られた日に、財布を忘れるなんて、と少し笑えてきました。

結局、同じバスで来ていたハイカーの方に思いきって声をかけて、お金を貸してもらいました。図々しいかもしれないと思いながらも、正直に事情を話しました。するとあっさり「いいですよ」と言ってくれました。その瞬間、身体の力が抜けました。

お湯に浸かりながら、今日はなんだか全部うまくいっていないようで、実は全部うまくいっているのかもしれないと思いました。三回流れたことも、雪が少しだけ残っていたことも、頂上に戻らなかったことも、財布を忘れたことも。完璧ではない一日のほうが、あとから振り返ると、なぜか愛おしいです。

高見山は、やっと行けた山というより、やっと「今の自分」で向き合えた山だったのかもしれません。うまくいかないタイミングにいちいち落ち込んでいた自分も含めて、全部、ちゃんと途中だったのだと思います。


あの日の断片。

https://www.youtube.com/shorts/yrcKhIwBaAE

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